メセナアワード

メセナアワード2024

[メセナ大賞]

カトーレック株式会社

四国村ミウゼアムのリニューアル

活動内容

香川県屋島の南麓5万7,000㎡に広がる野外博物館・四国村。カトーレック創業者の加藤達雄氏が1976年に開設し、江戸~大正時代に建てられた四国各地の古民家や産業遺産をはじめ、それにまつわる民具、民俗資料を収集・保存・展示している。開村から約半世紀を経て、博物館の存在意義を見直し、2022年に「四国村ミウゼアム」と名称を変え大きくリニューアルした。
施設入口には、新たなランドマークとして東京大学准教授・川添善行氏が設計したエントランス棟「おやねさん」を新設したほか、2つの蔵をインフォメーションセンター・ミニシアターに活用。また、主要な建物と四国の伝統産業である砂糖づくりや醤油醸造、楮蒸しなどの過程や道具の解説、当時暮らしていた家族へのインタビュー映像など、展示内容も全面的に刷新し発信力を強化。さらに、約2万点の民俗資料(うち6,514点が国の重要有形民俗文化財指定)をおさめた収蔵庫も公開し、毎月予約制のツアーを実施している。
週末は囲炉裏に火を入れ、季節に応じた飾りを施すほか、小豆島農村歌舞伎舞台では石切り唄・砂糖〆唄といった仕事唄や民話オペラを上演するなど、展示のみならずさまざまな手法で人々の営みや生き様を伝える。リニューアルにより年間の来村者数も増加し、多言語対応の音声ガイドの導入を受けて外国人が3割を占めるほか、小学生以下を無料にし、校外学習の利用もさらに増えている。
新名称は、開村時から親交が深かった画家・猪熊弦一郎氏が『生きている四国村』という文章に残した「大きな野外の建築ミウゼアムよ。がんばってくれ。」という一節からきている。四国の先人の労苦や知恵、祈りが込められた「人智遺産」は、創設者たちのエールとともに、今なお生き続けている。

受賞理由

歴史的建築物や文化財の維持保全とともに、公開・活用しながら先人の暮らしを後世に伝え、博物館の新たな可能性を広げている。
リニューアルを経て展示内容を充実させ、よりユニバーサルかつていねいに発信する工夫により、地域文化の理解促進につなげている。

企業プロフィール

本社所在地:東京都江東区
創立年:1961年
資本金:7,600万円
従業員数:2,270名(グループ総数:7,900名)
主な事業:ロジスティクス事業(運送、倉庫、物流加工)、エレクトロニクス事業(電子機器の製造受託サービス)
URL:https://www.katolec.com/
(2024年3月現在)

[優秀賞] ―地域密着で、美術の裾野を拡げる希望の場―

大分県信用組合

けんしん創立70周年記念 第32回けんしん美術展

活動内容

2023年に創立70周年を迎えた大分県信用組合は、県内を拠点に38店舗展開する九州で最大規模の協同組織金融機関だ。自治体や大学機関をはじめ130団体と包括連携協定を結び、健康、子育て、まちづくり、観光など幅広いテーマで地方創生活動に取り組む。その一つに、地域の芸術文化活動の振興支援を目的に、1992年から「けんしん美術展」を開催している。
毎年県内在住者を対象に、自由なテーマで洋画・日本画の未発表作品を150点募集している。3名の審査員によって「けんしん大賞」をはじめ優秀賞、特別賞など20点が選出され、大賞作品には賞金と組合からの買い取り額をあわせた50万円が支払われる。参加年齢の幅広さが特徴で、昨年は8歳から101歳まで出品し、全ての作品は10月に同組合本店のホールで開催する美術展で10日間展示され、その後、入賞作品のみ2ヶ所の支店で巡回展示される。大分の芸術の秋を彩る恒例行事として、表彰式や審査講評は地元の民放テレビやラジオ、新聞でも取り上げられ、昨年は650人が来場した。
2017年には若手・新人作家の発掘・育成を目的に、40歳以下を対象とした「けんしん同友会賞」を創設。昨年は3名の高校生が選ばれた。過去の出品・入賞者の中には、美術館館長に就任する人や美術教諭の立場で後進の指導にあたる人もおり、美術愛好家の裾野を拡げている。また、会場では地域で創作活動を行う障がい者の作品展も同時開催し、展示機会の少ない作家と鑑賞者との出会いの場を創出している。
近年は市中のギャラリーや大学、公立美術館でも特別展を開催。さまざまな人の希望をつなぎ、地域文化を醸成する架け橋となっている。

受賞理由

継続して幅広い人々の創作・交流の場をつくり、地域の活性化と文化振興に寄与している。
発表機会の提供により、地域の人材育成とともに、芸術文化の裾野の拡大と循環につなげている。

企業プロフィール

本社所在地:大分県大分市
設立年:1953年
資本金:139億円
従業員数:421名
主な事業:金融
URL:https://www.oita-kenshin.co.jp/
(2024年9月現在)

[優秀賞] ―絵画を通して世界の子どもの環境意識を高める―

花王株式会社

花王国際こども環境絵画コンテスト

活動内容

2023年に第14回を迎えた「花王国際こども環境絵画コンテスト」は、31の国・地域の子どもたちから15,916点の応募が集まった。地域別では、国内798点、アジア・太平洋14,644点、米州99点、欧州216点、中東151点、アフリカ8点と国際色豊かなコンテストとなっている。
同コンテストは2010年にインドネシアで開催された環境配慮型製品・サービスの展示会に花王が出展した際、同社ブースで、現地の子どもたちが環境について考えて描いた絵を展示したことがきっかけで始まった。絵に込められた子どもたちのメッセージに、当時の社長をはじめ皆が心を打たれ、「子どもたちが環境に関心を持つきっかけを花王の取り組みからつかんでほしい」、「子どもたちの未来を花王も一緒に見ていきたい」との想いから、同年「花王国際こども環境絵画コンテスト」としてスタートした。
当初は子どもたちに環境への関心を持ってもらうことに主眼を置き、テーマを「いっしょにeco」としたが、大人も含めた人々の意識・行動変容のきっかけにしたいという想いを明確に表現するため、2016年からは「みんなでいっしょにeco」に、さらにより広く地球の環境や未来について考えられるよう2021年からは「サステナブルな環境をみんなでつくろう!」へテーマを変更し展開している。テーマの変更とともに、社外協働者を増やしながら展示場所を拡大しており、2023年は65カ所で約22万人が鑑賞した。
2024年には新たな仕組みとして、子どもたちの応募1作品につき50円を、また、鑑賞者が子どもたちに1メッセージを送ることで1円を花王から環境活動団体へ寄付するスキームを立ち上げた。今後、子どもたちの想いや夢へのさらなる共感の輪の広がりが期待される。

受賞理由

絵画を通じ、世界中の子どもたちが環境や未来について、考える機会を与えている。
絵画の展示を積極的に展開することにより、鑑賞者がサステナブルな暮らしについて考え、行動を変えるきっかけを作っている。

企業プロフィール

本社所在地:東京都中央区
設立年:1940年(創業 1887年)
資本金:854億円
従業員数:8,199名 (2023年12月現在)
主な事業:家庭品、化粧品などの日用品、および化学品の製造販売
URL:https://www.kao.com/jp/
(2024年9月現在)

[優秀賞] ―日本の芸術を伝承するボストン美術館との協働―

公益財団法人鹿島美術財団

ボストン美術館 日本美術総合調査・図録・派遣研究者へのオーラルアーカイブ

活動内容

明治期に海外へ渡った日本美術品のうち、ボストン美術館の所蔵品は質、量ともに最大級を誇る。約7万点を数えるコレクションは、エドワード・シルベスター・モース、アーネスト・フランシスコ・フェノロサ、ウィリアム・スタージス・ビゲローらボストンの富裕層たちと、同館の初代東洋美術部長を務めた岡倉覚三(天心)によって形成された。一方でその大半は調査が進んでおらず、100年以上を経た1991年、鹿島美術財団の助成支援によって初めて総合的な悉皆調査が開始された。
プロジェクトは3期に分かれ、仏画・仏像・仏具・袈裟・能面・土佐派・琳派・水墨画・初期狩野派・桃山諸派・曾我蕭白・伊藤若冲・近代絵画・絵巻物など約5,000点を対象に、各分野における第一線の専門家が派遣された。途中中断や追加調査、コロナ禍を経て約30年にわたり、携わった研究者は延べ50名となる。辻惟雄氏とアン・ニシムラ・モース氏を中心に、日本と海外の研究者による共同調査の先駆的な役割を果たしている。
2022年には図録を刊行し、絵画・彫刻・工芸2,976件の制作年代・法量・落款・調査者による所見などの解説と3,494点の画像を収載。さらに、財団のウェブリニューアルを機に7名の派遣研究者へインタビューを行い、所蔵品の学術的意義や当時のエピソード、国際協働のあり方への提言などをオーラルヒストリー(口述史)として公開した。調査の全容に迫る同書と貴重な証言は、美術史学における将来的な研究の指針として期待する声も寄せられる。
今後は図録の電子版や日本未公開の作品に関するシンポジウムなども視野に入れる。日本美術の新たな扉を開き、知の基盤を築いている。

受賞理由

学術専門性の高い調査研究と公開により、日本美術界の歴史を捉え、後世に残る記録として貢献している。
前例のない壮大な国際プロジェクトに挑戦し、日本と世界の共同研究の未来を切り拓いている。

団体プロフィール

本社所在地:東京都港区
創業年:1982年
基本財産:184億円
職員数:6名
主な事業:調査研究助成、出版・国際交流援助、振興等
URL:https://www.kajima-fa.or.jp/
(2024年9月現在)

[優秀賞] ―次世代アーティストに自由な資金と交流の場を提供―

公益財団法人クマ財団

奨学金や助成金、ギャラリー運営を通じた若手クリエイターの育英支援事業

活動内容

2016年に設立されたクマ財団は、若手クリエイターのため、「クリエイター支援奨学金」、「奨学金卒業生を対象とする活動支援」、「クマ財団ギャラリーの運営」を事業の柱として、「INPUT/学び・OUTPUT/創作活動・OUTCOME/成果」のクリエイティブサイクル構築をサポートしている。
まず、クリエイターを目指す25歳以下の学生を対象とする返還義務を負わない「給付型奨学金制度」をスタートした。年間給付額120万円の使用用途は問わず、若手クリエイターが創作活動に「本気で取り組む1年」をサポートしている。また、「交流会/キックオフ」、「合宿/Kuma Camp」、「グループ展」を開催し、奨学生同士がジャンルを超えて交流する場も提供している。
次いで2021年に「活動支援」事業も開始。奨学金卒業生が次のステップへ進むための機会をプロジェクトベースで支援する制度で、30万円~500万円の5コースのうち自身のプロジェクトに合う金額を選択して応募。奨学生が創作活動の基礎を築いたのち、クリエイターとして飛躍するためのステージをサポートする仕組みである。
さらに3つめの事業としては、2022年、財団が支援する若手クリエイターのための展示スペース「クマ財団ギャラリー」を東京・六本木に開設。財団として、奨学生のグループ展や活動支援生の個展などが開催できる空間を持つことで、若手クリエイターが世に出る機会を創出している。
同財団が支援してきたクリエイターは、現在、美術・現代アート・テクノロジーなど29種の領域の384名にのぼる。AI技術の台頭と普及が進むなど、社会が大きな変革期を向かえる中、若き才能が投げかける新しい価値に共鳴することにより、創造性の波紋が無限に響き合う社会の実現を目指していく。

受賞理由

用途を限らない奨学金や交流の場を提供することにより、若手クリエイターの創造性を育んでいる。
プロジェクトベースの支援や、作品発表の場の提供により、若手クリエイターのステップアップをサポートしている。

団体プロフィール

本社所在地:東京都港区
設立年:2016年
正味財産:8,991万5,996円
職員数:3名
主な事業:若手クリエイターの育英事業
URL:https://kuma-foundation.org/
(2024年9月現在)

[優秀賞] ―子どもと舞台芸術との出会いの場をつくり続ける―

公益財団法人ニッセイ文化振興財団/日本生命保険相互会社

ニッセイ名作シリーズ

活動内容

1964年に「ニッセイ名作劇場」として始まり、2023年に60年目を迎えた「ニッセイ名作シリーズ」。小学生を課外授業の一環として学校単位で無料招待しており、2023年は全国9都市で59公演を実施し、688校、6万4,090名が参加した。また、同年度末まで累計5,200回を超える公演を重ね、延べ約807万名の児童を招待している。
ニッセイ文化振興財団は「育む」「届ける」「支える」を基本理念として芸術文化の振興に取り組んでおり、同活動はまさに「育む」ための根幹の事業として、子どもたちが本物の舞台芸術に触れることで豊かな情操を育み、多様な価値観を形成する機会を提供し続けている。近年、各地域が抱える社会課題解決への取り組みの一環として、日本生命と地方自治体の包括連携協定締結が進んでおり、同財団も全国での公演開催にも力を入れている。
2023年度、全国公演では同財団が企画制作した、ファンタジー文学の旗手 上橋菜穂子の代表作で初の舞台化となる音楽劇「精霊の守り人」と、画家 ヒグチユウコの絵本を原作とする舞台版「せかいいちのねこ」を上演。また、日生劇場では劇団四季とタッグを組んだ新作ミュージカル「ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~」を上演した。
年代を問わず社会の各層で活躍されている人々から、同活動の鑑賞経験について語られることも多く、舞台芸術振興への貢献度も大きい。企業メセナとして長く継続され、子どもたちの情操の育成、また舞台芸術の振興に大きく寄与してきた「ニッセイ名作シリーズ」。時代の流れとともに教育および社会が大きく変化しつつある中で、子どもたちが心の豊かさを育む場としてより一層、貴重な役割を担っていく。

受賞理由

60年以上に渡り、延べ800万人超の児童が本物の舞台芸術に触れる機会を提供している。
子どもの豊かな情操を育み、多様な価値観を形成する場としての役割を担うとともに、舞台芸術振興に大きく寄与している。

団体プロフィール

公益財団法人ニッセイ文化振興財団
団体所在地:東京都千代田区
創業年:1973年
正味財産:14億7,491万8,857円
職員数:43名(2024年10月現在)
主な事業:日生劇場の運営、舞台芸術の企画制作、上演
URL:http://www.nissaytheatre.or.jp/
(2024年9月現在)

企業プロフィール

日本生命保険相互会社
本店所在地:大阪府大阪市
設立年:1889年
基金:1兆4,500億円
従業員数:68,072名(2024年3月 現在)
主な事業:生命保険業、付随業務・その他の業務
URL:https://www.nissay.co.jp/
(2024年9月現在)

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