トップメッセージ
芸術文化は、元来、創造性や豊かな人間性を育み、人々の生活に彩りと潤いを与えてくれるものであります。また、今日では、観光・まちづくりや福祉、教育等のさまざまな分野で、創造的な社会・経済活動の源泉として、新たな需要や高い付加価値を生み出しています。
日本には、各地に伝統芸能をはじめとした魅力的な文化資源が数多くありますが、企業がこのような芸術文化と他の分野を結びつけて、地域の活性化や次世代育成、福祉、環境等のさまざまな社会的課題の解決に寄与する事例が増加するなど、時代の変化とともに我々の企業メセナ活動の社会的な役割や期待がますます大きくなっています。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、社会に大きな混乱をもたらし、多くの人々が行動変容を迫られることとなりましたが、こうした未曽有の困難と不安の中、芸術文化は、人々に安らぎと勇気、明日への希望を与えるものとして、その本質的な価値があらためて認識されました。
企業メセナ協議会は、企業を中心とした民間主導の文化振興を通じて、文化と経済を両輪とした多面的な社会創造に寄与してきましたが、今後も芸術文化と企業・メセナにかかわる人々を結ぶ懸け橋となり、芸術文化の可能性をさらに広げるとともに、「誰一人取り残さない社会」の実現に向けて、協議会活動に取り組んで参ります。
ふたみや・まさや
1974年中央大学法学部卒業、日本火災海上保険入社。2011年日本興亜損害保険代表取締役社長執行役員。2014年損害保険ジャパン日本興亜代表取締役社長執行役員。同社代表取締役会長、損害保険ジャパン取締役会長を経て2022年SOMPOホールディングス特別顧問。一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)理事長。
社会の発展には、物質的豊かさ(経済)と心の豊かさ(文化)の両輪が必要と思います。
物質的豊かさ(経済)の追求は主に企業が担っていますが、より広い文脈で考えると「文明」であり、近代文明は世界を豊かにする一方で、世界を均質でフラットにし、そして大都市の高層ビルなど、同じような風景をつくり出しました。また、産業革命以来の加速度的な経済発展は、私たちの世界を豊かにすると同時に環境などに深刻な影響を与えています。
一方、文化は質的な、精神的な豊かさを追求し、ローカルで多様なもの、異なる風景を生み出すものです。
物質的豊かさ(経済)と心の豊かさ(文化)の両輪がバランスよく回転することで、私たちの住む世界はより豊かなものになります。SDGs、ESG経営などに象徴されるように、単に物質的豊かさのみを企業が追求することは許されない時代になっています。また、逆説的ですが、経済的利益のみを追いかける視野狭窄に陥らず、多様性を重視し、人々の心の満足を真剣に考える企業、文化理解のある企業こそが革新的な商品やサービスを生み出せるのではないか、と思います。
企業メセナ協議会は、文化と経済の両輪をつなぐ軸となり、文化芸術を支援するとともに、会員企業の皆さま、そして社会にその成果をフィードバックし、文化と経済の両輪がバランスよく回ることに貢献する存在でありたいと思います。
なつさか・ますみ
花王株式会社前顧問、学校法人啓明学園理事長。1956年埼玉県生まれ。大阪大学人間科学部卒業、ワシントン大学経営学修士課程修了。1979年花王入社、ニベア花王株式会社取締役、花王株式会社常務執行役員、株式会社カネボウ化粧品代表取締役など歴任。