トヨタ自動車株式会社

ウィーン・プレミアム・コンサート

メセナライター 福田里香
外部ライターによる「メセナの現場」体験記をお届けします。


ウィーン・プレミアム・コンサート東京公演より

トヨタ自動車株式会社主催:ウィーン・プレミアム・コンサート(特別協力:ウィーン国立歌劇場)が、今年も4月16日~同27日、全国7都市8公演で開催された。2000年に始まったウィーン・プレミアム・コンサートは、今年17回目、累計公演数は本公演だけで124、総動員数20万人を超える。日本オーストリア国交150周年の今年、オーストリア縁の催し物は俄かに多くなったが、こちらはすでに20年目を迎える。


指揮者なしのオーケストラは、芸術監督シュトイデ氏の大きなアクションで演奏が始まる。

ウィーン・プレミアム・コンサートとは
その名の通り、ウィーンの選りすぐりの音楽家による演奏会だ。伝統とクオリティの高さを誇るウィーン・フィルおよびウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーを中心に特別編成されたオーケストラ「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」が奏でる。本公演のために集まった30名の精鋭が繰り出すサウンドは、どこまでも本格派である。しかも、入場料は、来日主要オーケストラ演奏会の何分の一かという夢のような価格設定だ。


ブルッフ作曲クラリネットとヴィオラのための協奏曲 演奏風景
クラリネット=ゲラルド・パッヒンガー(初代芸術監督P.シュミードル氏の高弟)
ヴィオラ=エルマー・ランダラー(ウィーン・フィル及びウィーン国立歌劇場管弦楽団所属)

ウィーン・プレミアム・コンサート東京公演を聴いて
音楽会の冒頭から身を乗り出したくなるコンサートであった。筆者が鑑賞したウィーン・プレミアム・コンサートは、4月24日(水)東京オペラシティコンサートホールでの公演。演奏プログラムBは、前半に、シューベルトの交響曲第5番とブルッフのクラリネットとヴィオラのための協奏曲、後半に、ウィンナ・ワルツやポルカという構成。ニューイヤー・コンサートでお馴染みのウィンナ・ワルツが演奏されると、会場は手拍子とともに、華やかな雰囲気に包まれた。

大編成の「アルプス交響曲」演奏も
今年のプログラムは3種類。ウィーンを拠点にグローバルな活躍を重ねる指揮者の佐渡裕氏を迎えて、「名古屋フィルハーモニー管弦楽団」との大編成によるリヒャルト・シュトラウス作曲「アルプス交響曲」も注目のプログラムだった。また、日本人若手ピアニスト、北村朋幹氏を起用してのモーツァルト中心のプログラムも好評だったという。


「トヨタ・マスター・プレイ ヤーズ,ウィーン」と「名古屋フィルハーモニー管弦楽団」との大編成によるリヒャルト・シュトラウス作曲「アルプス交響曲」演奏場面


芸術監督シュトイデ氏の等身大パネル。終演後、団員たちが現れるサプライズも。

青少年を対象とした「次世代プログラム」も充実
2007年から始まった次世代プログラム、今年も「ウェルカム・シート(コンサートへのご招待)」「公開リハーサル」 「ふれあいコンサート(小・中学校などへの訪問コンサート)」が開催された。


公開リハーサルに招待されて鑑賞する中高生

全8公演で「ウェルカム・シート(各公演100名を抽選で招待)」を利用して、小学生以上24歳以下の若者がコンサートを楽しんだ。昨年までで、すでに計83公演、6,600名以上の青少年がこの制度を利用したという。

また、「公開リハーサル」では、日ごろ、クラブ活動などで楽器を演奏する若者含め、幅広い音楽愛好者が音楽づくりに接する貴重な体験をした。


次世代プログラム「ふれあい(学校訪問)コンサート」で交流

社員が活躍するメセナ活動
12日間に全国7都市8公演、3種類の次世代プログラム、さらには、東京のオーストリア大使館での日本オーストリア修好150周年記念行事での演奏まであったという。このマネジメントを、外部の代理店を頼らずに、社員のみで行っているというから驚く。社内関連部署との連携はもちろん、ロジ全般から集客、演奏曲目の調整まで、守備範囲は実に広い。

担当者は、楽器の演奏は子供時代に嗜んだ程度と謙遜するが、音楽家の筆者からみると、広く一般向けに求められているニーズを汲む力や、社会とのつながりへのバランス感覚は、大いなる強みだとインタビューを通じて感じた。

【ご担当者様紹介】


内田京子さん トヨタ自動車株式会社東京本社ロビーにて

「音楽は人生に必要!」と熱く語る、社会貢献推進部 内田京子さん(プログラム推進室 メセナグループ主任)ウィーン・プレミアム・コンサートを担当して、今年8回目だという。

心に残るエピソードとして、お客様からの感謝の手紙をご紹介して頂いた。心温まる感謝の手紙が届くと、本当にやっていて良かった!と思うそう。担当者の熱い思いが、メセナ活動の更なる推進力になっている。

*取材を終えて*
とにかく音が美しい。アンサンブルも巧みで楽しい。宝石のような瞬間が幾つもある、ウィーン・プレミアム・コンサート。ウィーンに短期音楽留学していた筆者は、このクオリティが日本に居ながらにして、何千円かで聞けることに驚いた。トヨタ社員さん達がアートマネジメントの現場で工夫を重ねるこの企業メセナ、進化しながら快走中のようだ。

シュトイデ氏のパネルと(於:東京オペラシティコンサートホールロビー)メセナライター:福田里香

◎訪問日1:2019年4月24日(水)
◎訪問先1:東京オペラシティコンサートホール(ウィーン・プレミアム・コンサート・コンサート)

◎訪問日2:2019年5月24日(木)
◎訪問先2:トヨタ自動車株式会社東京本社 https://global.toyota/jp/company/

公式サイト:ウィーン・プレミアム・コンサート https://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/social_contribution/society_and_culture/domestic/tomas/

(2019年7月1日)

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