株式会社アサツー ディ・ケイ

ADKアートギャラリー Collaborated by TOMIO KOYAMA GALLERY

メセナライター 天田 泉
“企業の文化施設・アートスペース” “新会員や話題のメセナ活動”をテーマに、外部ライターによる「メセナの現場」体験記をお届けします。


エントランスを入ると、アートギャラリーに展示された作品が目に飛び込んでくる。
現在展示されているのは、大野智史「Prism double diamonds.プリズム ダブルダイアモンズ」。

2014年に虎ノ門ヒルズ(東京都港区)11~15階に移転した、株式会社アサツー ディ・ケイ本社オフィス(以下ADK)。2014年より13階のエントランス横にアートギャラリーを設け、気鋭のアーティストによるオリジナル作品を展示している。

アーティストが実際にこのオフィスを訪ね、ADKが掲げる「POWER OF ACTION」(実現力)をテーマにオリジナル作品を制作。ほぼ1年ごとに作品を入れ替え、新しい才能を紹介する場としてアーティストを応援する場になっている。

台座の鏡面に作品が映り込み、覗き込むと異次元に引き込まれてしまいそうな感覚になる。

アーティストが社会に働きかける“場”

この日は、ADKのアートディレクター 阿字地 睦さん、同じくコーポレート・コミュニケーション室長 中島 香さん、現代アートのギャラリーを運営する小山登美夫さん、同じくアートギャラリーを運営する厚川欣也さんに話をお聞きした。

◎ADK 中島香さん:
―― このオフィスには、“パワー・アイデア・キャンプ”といって、キャンプのようなオフィスにいろいろな人たちが集い刺激し合ってアイデアを生み出す、というコンセプトがあります。エントランスのまわりにあるこのギャラリーも、ここを行き交う人たちが作品を見ることで、アイデアをインスパイアされるような場を考えました。

◎ADK 阿字地 睦さん:
―― 僕らの会社は生活者の態度を変容させたり、行動をちょっと変えたりすることを提案していく業種です。来客の方やここで働く私たちも含めて、アートを通して気持ちをちょっと違う位置に動かす、ということを共有できたらいいなと思います。

◎小山登美夫さん:
―― アーティストにとっても、いろんな人たちが行き交うオフィスにあるこのギャラリーは、美術館や通常のギャラリーで作品を発表するのとはまた意味が違いますね。アーティストは、自分のつくりたいものだけをつくるだけではダメなので、そうした意味でも社会にもまれるような場所でチャレンジをできるのはいいことだと思います。

◎厚川欣也さん:
―― アーティストには、制作する前にオフィスに足を運んでもらい、どうしてオフィスで展示をするのかなどを聞いてもらったうえで、作品がアウトプットされます。そのあたりのオリジナリティが通常のアーティストの活動とは違うと感じますね。

◎ADK 阿字地さん:
―― アーティストの方がADKの掲げるテーマをどう咀嚼して解釈していただけるかは、いつもたのしみですね。「ああ、そういうふうに作品をつくるんだ」「なるほど、そういう解釈をするとおもしろい」など、僕自身、いつも気づかされていい刺激をもらっています。

2014年に展示されていた、廣瀬智央「Power of Action ? 豆の神話学」。

生命力を表す豆や木の実をアクリルキューブに埋め込んでいる。
実際に使われていたADKのロゴが印刷された書類を丸めたものも、見られる。

“自分たちのもの“と思える作品

◎中島さん:
―― 2015年のラビットハウスは、オフィスの中にまた家があったので、いらっしゃる皆さんが驚いて、「あれは何?」と関心をもたれました。社員たちも自分の担当のお客様がいらしたときに、作品を説明したりして話題に広がりが生まれました。

◎小山さん:
―― こういうかたちで仕事をする場所や、学校とかに美術品があるのはとてもいいことだと思いますね。たとえば観葉植物なんかはそうした場所に置かれるようになったじゃないですか。それと同じように美術品も普通に置かれるようになればいいなと思います。植物と同じ感覚で場所を変えたり、作品を入れ替えたりするものいいですよね。

◎厚川さん:
―― 自分たちが仕事をしている場所に作品があるのがいいですよね。単に買ってきた絵を壁にかけるということではなく、一年間ギャラリースペースでつき合う。そうすることで作品自体が「自分たちのもの」と感じられるのがすごくいい。とくに現代アートにはそうしたことに向いていると思いますね。

2016年 佐藤翠「Red mirror closet l、ll」
ギャラリーに展示された後、現在は会議室の前に展示されている。“赤”はADKのコーポレートカラー。

2015年 三宅信太郎「ラビットハウス」はインパクトのある作品。
中に入ったり、周囲に置いたスツールに座ったりすることもでき、来客との話題が広がった。

左から阿字地 睦さん(ADKクリエイティブディレクター/アートディレクター)、
厚川欣也さん(Galerie NUAGE)、小山登美夫さん(小山登美夫ギャラリー)

*取材を終えて*
会社の顔であるエントランススペースにあるADKアートギャラリー。さまざまな人たちが現代アートに自然に接することができる、オープンな“場”に魅力を感じました。同じ作品も、朝と昼、夜では見え方も違い、そのときどきの状況や気持ちによっても感じ方も変わってきそうです。個性がそれぞれ違う作品たちが年々増えていくことで、このオフィスがどのように変貌していくのかがたのしみです。(天田)

◎訪問日:2018年2月8日(木)
◎訪問地:株式会社アサツー ディ・ケイ ADKアートギャラリー
[東京都港区虎ノ門一丁目23番1号 虎ノ門ヒルズ森タワー]

(2018年2月20日)

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