メセナ大賞1991
メセナ大賞
国際芸術・文化振興奨学金制度の創設ほか
活動内容
林原グループの文化活動は、フォーラム、講演会などを開催する社団法人林原共済会と、財団法人林原美術館を中心として行っている。
林原共済会が1991年2月に設立した「国際芸術文化振興奨学金制度」は、国内外の優れた伝統芸術や文化を継承する若手の芸術家や研究者を対象に奨学金を支給するほか、さまざまな芸術・文化活動の支援を行うというもの。この制度の最初の対象者として5名が選定された。そのうち中国伝統音楽の伝承者で、その技術の研究のために現在日本に留学中の陶敬頴は映画「ラストエンペラー」のテーマ曲を演奏するなどの活躍をしている。この制度は、将来的にはさらに多様な分野の多くの対象者を検討していく方針。
また1985年から「林原フォーラム」を開始。科学、文学、社会、哲学など広い分野にわたる国際会議や講演会の企画・実施に取り組んでいる。中でも1990年8月には、フィールズ賞受賞者の広中平祐博士を迎え、国際会議を開催するなど、ノーベル賞クラスの研究者を国内外から招き、主として岡山で開催している。
「林原美術館」は、国宝・重文クラスの刀剣、能装束をはじめとする美術品を多数所蔵し、ほぼ毎月テーマごとに展示を行うほか、国立博物館などのご協力をあおぎ、年に1~2回特別展を開催している。 1990年には備前刀の再興すべく、元・国立博物館の刀剣室長の加島進氏を迎え、「刀剣研究室」を設立。さらに1991年10月には地元刀工を養成する刀剣鍛錬所も建設した。
このほか、映画「黒い雨」の制作協力をするなど、林原ではさまざまな文化支援活動を積極的に展開している。
URL https://www.hayashibara.co.jp/data/3401/sustainability_tp/
メセナ特別賞
建築、現代美術等の展覧会開催、出版ほか
活動内容
株式会社INAXは、生活文化に関わりの深い企業で、事業そのものを生活文化創造業として捉えている。企業の活動を通じて、日本の文化基盤の育成を考えていく。そして社員自身の文化度を高め、真の生活創造企業へと発展を続けている。したがって、文化活動の企画、運営は、社員が中心となり主体となる、独自のすすめ方をしている。
同社のメセナ活動は、1981年に社会性・文化性を強調したコーポレート・コミュニケーションの場としてオープンした銀座ショールームの2つのギャラリーが、スタートになった。 そのうち「INAXギャラリー1」は、企業ギャラリーの草分け的な存在といえ、建築文化に関するテーマ企画展を3カ月単位で実施し、毎回84頁のブックレットも発行。その数もすでに50回を数える。「INAXギャラリー2」では、コンテンポラリーアートの企画展を中心に展開。1990年には、100回を数え、”80年代現代美術100のかたち”も出版した。101回からは、現代美術の新人のためのギャラリーという新しいコンセプトを打ち出し、国内外や年齢を問わずに作品を公募し、審査するという方式にシフトしている。 さらに「名古屋ギャラリー」でも、インダストリアルデザインをテーマに、講演会の開催とともにブックレットを発行している。また「大阪ギャラリー」も推進したり、広島、札幌などでも地域密着の展開を続けたりするなど、同社は全国的な規模でメセナ活動を展開している。
一方、文化講演活動の事業でも全国9カ所での「人・間・空・間セミナー」を開催。毎月1回社会人のための講座「INAXアートスクール」も開催している。
ほかにも日本国内だけにとどまらず、広く海外に向けた活動として、「INAX DESIGN PRIZE」を実施。1989年にスタートしたこの顕彰事業は、海外デザイナーの作品応募の中から、毎年4名の受賞者を選定。INAX本社の工房で、日本のクラフトマンと交流しながら創作活動を行い、生活体験を共にするというユニークなものである。
URL https://livingculture.lixil.com/
メセナ特別賞
大英博物館日本ギャラリーの設立資金援助ほか
活動内容
コニカ株式会社では、小西六から社名変更を含むCI計画をしていた1985年、ロンドンの大英博物館から日本ギャラリー建設の意向を受けた。社長の決断による約2億円の寄付は、他社の追随するところとなり、火つけ役になった。1990年4月大英博物館では先陣を切ったことへの感謝と友好の意を末永く表す証しとして、コニカギャラリーと名付けた一角を誕生させた。
この支援のほか、コニカのメセナ活動の範ちゅうでは、財団法人コニカ橘保善会を1966年に設立。創業者の遺志を後世に継承する機関で、写真に関する学校や研究者を対象に、毎年奨学金を出している。また、新宿駅東口のコニカプラザは、フォトギャラリーをはじめ、さまざまなイベント広場。ここでも、コニカプラザ奨励賞、アーチスト・プライズを設け、作品発表の場としても、若手・新進の制作活動を支援している。 また1986年から協賛しているヨーロッパ「歌舞伎公演」では1990年に”東京-パリ友好都市記念事業”で協賛した。 日米の学生を対象に、夏休みの研修旅行を提供している「ユースサミット制度」の実施も、グローバルな企業文化の一面である。
URL https://www.konicaminolta.com/jp-ja/index.html
メセナ特別賞
35年にわたる新日鉄コンサートの開催、音楽賞の創設
活動内容
ラジオ番組「新日鉄コンサート」は、新日本製鐵株式会社が旧富士製鉄時代から35年間にわたり提供を続けている長寿番組である。クラシック音楽がいまほど身近でなかった当時から無料公開コンサートを開催し、一般市民に広くクラシック音楽を普及してきた。
この番組の放送35周年と同社の創立20周年を記念し、1990年、「新日鉄音楽賞」を創設した。これは、若手の優れたアーティストに贈る「フレッシュアーティスト賞」と、その年の音楽界で注目されたユニークな活動、企画などをした個人に贈られる「特別賞」の2つである。「フレッシュアーティスト賞」受賞者は、年内に新日本フィルハーモニー交響楽団と競演の機会が与えられ、「特別賞」はアーティストに限らず、評論家、プロデューサー、演出家、調律師など、ジャンルを問わず広い視野から選考される。1990年には、フレッシュアーティスト賞をヴァイオリニストの諏訪内晶子、特別賞をソプラノ歌手の松本美和子が受賞した。なお、賞の創設とともに「新日鉄コンサート」の中の若手演奏家のリサイタルシリーズ「プロミシングアーティストシリーズ」を年7回にし、よりいっそう若手の発表の場を増やしている。
URL https://www.nipponsteel.com/csr/social/music/index.html
メセナ賞
ふるさと交響楽シリーズなどのNHK交響楽団への協賛
活動内容
株式会社岩谷産業では「クラシック音楽を通じてわが国の音楽芸術の向上発展を図る」という、NHK交響楽団の事業目的に賛同し、1987年7月以来多面的な事業協力を進めている。その事業協力のひとつが、<日本民謡によるシンフォニック・スケッチ~N響ふるさとシリーズ~「ふるさと交響楽」>づくりである。
これは、日本各地のすぐれた民謡や独自の風土を素材に、一流作曲家に編・作曲を委嘱し、シリーズとして創作活動を推進していくもの。現在、1988年の「江差」(北海道)から今年(1991年)の「陸前の海」(東北)まで、4年間で12曲が完成しており、NHK交響楽団によって初演されるとともに、各地での定期演奏会ではアンコール曲としても採用されている。
なお、この「ふるさと交響楽」づくりは、日本文化とヨーロッパ発祥のクラシック音楽を融合させるという全く新しい試みとしても注目を浴びている。このシリーズは、最終的には各都道府県に1曲ずつの“ふるさと交響楽”ができるまで続けていく予定である。さらに、創業60周年を迎えた1990年度においては、ひとつの区切りとして、全国各地でのN響による「イワタニ・ライフアップコンサート」、大阪センチュリー交響楽団による創業60周年記念式典での「祝典曲」演奏、中国・大連での遼寧楽団による「中日友好文化交流コンサート」を開催するなど、主に音楽部門でのメセナ活動を年間を通じて展開している。
URL http://www.iwatani.co.jp/jpn/csr/csr03-1.html#1
メセナ賞
クレアティヴィタリアの特別協賛ほか
活動内容
オムロン株式会社は1990年春、「クレアティヴィタリア」に協賛した。約1カ月にわたって、東京・汐留で開催された同展は、イタリア式生活デザイン体験ミュージアムで、イタリアの生活用品を、巨大な一軒の家に満たして紹介したイベントである。生活を楽しみ、遊び心も加えて生み出されたイタリアデザインに13万人の入場者が訪れた。 同年7月には、創作芸術「御室仁和寺夏調べ - SUPER SESSION成就」を開催。藤舎名生の横笛を軸に、日野皓正のトランペット、中村鴈治郎の創作舞踊が優雅にクロスオーバーし、オムロン発祥の地・御室仁和寺の宵をかざった。また一方では、ジャンヌ・モローの「ゼリンヌの物語」日本公演に協賛。
継続して行っているメセナ活動としては、1988年から毎月1回一般市民を対象に、政治・経済・文化など、さまざまなジャンルで活躍している方に講演いただく「オムロン京都文化フォーラム」がある。そのほか1989年からは毎年東京で人間の可能性を探ってゆく「朝日ヒューマンルネッサンスフォーラム」に協賛している。
メセナ賞
サイトウ・キネン・オーケストラの欧州公演協賛
活動内容
「サイトウ・キネン・オーケストラ」の結成は、偉大なチェリストであり、桐朋学園創設者の一人であった、故斉藤秀雄教授の10周忌に、その教え子たちが追悼コンサートを行ったことがきっかけとなった。その後、桐朋学園一期生の小澤征爾らを指揮者に、1987年、1989年、1990年とヨーロッパで公演。日本のオーケストラとしては、初めて伝統のザルツブルグ音楽祭に招かれる栄誉に輝いている。
セイコーエプソン株式会社では、このオーケストラを1989年から支援。これは、当時の中村社長は浅からぬ縁のあった小澤より持ち込まれたこのオーケストラの趣旨と精神に共感するとともに、「このオーケストラが世界に羽ばたく支援をしていこう」と決断をくだし始めたもの。いわゆる冠コンサートではなく、サイレントスポンサーでいこうという決断もその時に決まった。海外公演では、直接オーケストラの実行委員会と密な連絡をとり、また公演の舞台になるヨーロッパでは現地法人と協力。まさに手づくりのメセナという独自のジャンルを確立している。
URL https://www.epson.jp/SR/citizenship/culture.htm
メセナ賞
アマチュアオーケストラの支援活動
活動内容
「トヨタ・コミュニティ・コンサート」はアマチュアオーケストラ最大の課題となっている財政難や指導者不足に対応するため、トヨタ自動車(株)と全国のトヨタ販売店グループが各地のアマチュアオーケストラを支援しているコンサートシリーズである。 1981年から支援を行っており、財政面および準備、運営、本番の舞台裏まで支援している。1991年からは、指揮者を通常より長く派遣して指導したり、また、パート練習ができるようにトレーナーを派遣するなど、実力アップを目指すオーケストラ向けに方式を充実させてきた。
また「トヨタ青少年ミュージックキャンプ」では、地域文化の将来の担い手であるアマチュアオーケストラの青少年メンバー約200名を全国から募集し、3泊4日の研修を1985年から毎年開催している。世界8カ国から青少年と指導者を招聘し、合同練習を行うとともに、今後の国際交流のあり方についても協議している。
さらに「トヨタ・ミュージック・ライブラリー」では、市民オーケストラの悩みのひとつであるオーケストラ用楽譜の入手を手助けするため、1986年、ライブラリー(157曲)をトヨタ自動車東京本社内に設置。全国のオーケストラに無料で貸し出しを行っている。
そのほか東京では、「ステーション・リゾート・コンサート」を開催。これは忙しく働くビジネスマンやOLから広く一般公募し”丸の内交響楽団”を結成。本社ビル内で練習をし、東京駅でニューヨーク・シンフォニック・アンサンブルと合同演奏会を行うという企画である。
このようにトヨタ自動車では、さまざまな角度からアマチュアのオーケストラ活動を支援し続けている。
URL https://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/social_contribution/society_and_culture/domestic/
メセナ賞
モービル・ライブ・サウンズの提供
活動内容
「モービル・ライブ・サウンズ」は、地理的な条件のために、ナマの音楽を鑑賞する機会の極めて少ない地域の人びとに、一流のアーティストによる音楽を無料で提供するプログラムである。1986年から、年間6回の公演を継続しており、人口5,000人~10,000人の地域を開催地の対象にし、運営はモービル石油(株)と地元の人々が手づくりですすめている。1990年度は、クラシック音楽に力を入れ、年6回公演のうち、5回がクラシックの演奏であった。
また「モービル児童文化賞」は、わが国の児童文化の発展・向上に貢献する個人または団体をたたえる賞として、1966年に創設。
そのほか1971年に創設された「モービル音楽賞」は、日本の音楽文化の発展・向上に貢献する個人または団体をたたえる賞で、邦楽と洋楽の両部門がある。1989年からは、日本を代表するすぐれた若い音楽家をたたえ励ますために、洋楽部門に奨励賞を設け、本賞のトロフィーと副賞を贈っている。
URL https://www.hd.jxtg-group.co.jp/csr/child_reward/