メセナアワード

メセナアワード2019

[大賞]メセナ大賞

株式会社竹中工務店

木造モダニズム建築「聴竹居」による社会貢献と建築文化発信

活動内容

建築家・藤井厚二の自邸「聴竹居と「聴竹居倶楽部」メンバー京都府大山崎町の天王山の麓にある「聴竹居」は、1928年に建てられた建築家・藤井厚二の自邸である。同氏は、竹中工務店の設計組織に在籍した後、海外視察で見聞した欧米の様式と日本の気候風土や自然環境を融合させた「環境工学」を研究し、「日本の住宅」の理想形を追求した。それらの研究成果をもとに日本の住宅の近代化を試み、木造モダニズム建築の傑作「聴竹居」に結実させている。
同社と藤井家とのかかわりは、20年以上前に遡る。貴重な住宅の保存活用のために、2000年に空き家となった「聴竹居」の実測調査を大阪本店設計部の有志で行い、2008年には管理体制を整えてウェブサイトを制作、予約制で一般公開を始めた。全国各地から見学者が徐々に訪れ、2013年には天皇皇后両陛下(当時)が行幸啓された。後世に残していくべき歴史的建造物として、創立120周年記念事業に位置づけ、2016年に土地・建物を譲り受けた。2017年には国の重要文化財に指定され、今では年間来場者が1万人を超えている。
ガイド付き見学対応を担うのは、地元住民で構成された一般社団法人「聴竹居倶楽部」である。日常的に建物の維持管理をしながら、新緑と紅葉の時期には予約なしで見学できるイベント「愛でる会」も開催し、地域全体で保存公開に努めている。また、大山崎町にある千利休の唯一現存する茶室・国宝「妙喜庵・待庵」をはじめ6つの重要文化財の所有者・管理者が語りあう場「大山崎町重要文化財ネットワーク」も設立され、地域での誇りや愛着も増している。
2018年は「聴竹居」竣工90年・藤井厚二生誕130年の記念に、「聴竹居」展を竹中大工道具館で開催。これからも、先人の工夫と知恵が息づく住まいを支え、建築文化の発信とともに、人と地域を未来へつないでいく。

評価ポイント

地域主体で歴史的建造物の保存と公開に取り組み、建築文化を発信している。
建物を通じた人と人との交流を育み、地域に対するシビックプライドを醸成している。

企業プロフィール

本社所在地:大阪府大阪市
創立年:1899年(創業1610年)
資本金:500億円
従業員数:7,500名(2019年1月 現在)
主な事業:建築工事および土木工事に関する請負、設計および監理ほか
URL:https://www.takenaka.co.jp/
(2019年3月現在)

受賞スピーチ

宮下正裕

株式会社竹中工務店 取締役会長 宮下正裕 様

時代を越えた普遍的な価値を求め、地域、社会と連携していく

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[優秀賞]アートやで中之島賞

京阪ホールディングス株式会社

京阪電車中之島線なにわ橋駅「アートエリアB1(ビーワン)」における社学・地域連携文化活動

活動内容

中之島線「なにわ橋」駅の地下空間活用「アートエリアB1」京阪ホールディングス、大阪大学、NPO法人ダンスボックスの産学連携で、中之島線「なにわ橋」駅の地下空間を活用し、さまざまなプロジェクトを展開する「アートエリアB1」。2008年の開設以降、美術館や若手クリエイターが育つ場が少ない点から、現代アートに主眼を置き、「コミュニケーション空間としての駅」を目指して取り組んでいる。2015年には管理体制を整え、一般社団法人を創設した。
440㎡のスペースには、定期的に開催する参加型の対話プログラム「ラボカフェ」をはじめ、春と秋には主催プログラムを実施している。時事的なテーマを研究・探索した現代アートを展示する「サーチプロジェクト」や、2010年から継続する「鉄道芸術祭」では、海外アーティストの滞在制作や、プログラムの一つに電車公演を開催。京阪電車を臨時ダイヤで運行し、2018年は「ラジオになろうとする電車」をテーマに、ラジオブースに見立てた車両で音楽ライブや落語などの多彩なコンテンツを展開、実験的なプログラムを行った。
さらに開設10周年を迎え、新たに「クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島」プロジェクトをスタート。中之島の文化ネットワークの構築と創造的活用を目指し、アーティストや研究者によるフィールドリサーチや、周辺の美術館やホールなど19の文化施設・団体と連携した鑑賞ツアーや対話プログラムなどを企画実施した。地域の文化醸成に向けて、運営する三者の強みを活かし、アートエリアB1がハブ機能を果たしている。
将来的には、「中之島学術芸術祭(仮称)」の開催も予定。駅空間における実験的なプロジェクトと地域とのネットワークの両輪で、中之島のアートの輪を広げていく。

評価ポイント

過去の受賞から10年を経て、実験的な取り組みから多様なアートプロジェクトへ発展している。
産学連携の強みを活かし、企業や行政のみならず、文化施設などとのネットワークを広げ、地域振興に貢献している。

企業プロフィール

本社所在地:大阪府大阪市
創立年:1949年(創業1906年)
資本金:514億円
従業員数:145名
主な事業:運輸業、不動産業、流通業、レジャー・サービス業ほか
URL:https://www.keihan-holdings.co.jp/
(2019年3月現在)

受賞スピーチ

加藤好文

京阪ホールディングス株式会社 代表取締役会長 CEO 加藤好文 様

文化芸術もあわせもった「クリエイティブ・アイランド」に

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[優秀賞]文具を超える文具賞

コクヨ株式会社

「コクヨデザインアワードプロダクト」プロジェクト

活動内容

「コクヨデザインアワードプロダクト」文具コクヨデザインアワードは、コクヨが2002年より行っている国際コンペティションである。ユーザー視点のものづくりの推進を目的とした活動で、商品デザインを広くユーザーから集めて受賞作品の製品化を目指している。
募集対象は、同社の既存カテゴリーの文具・家具だけでなく「働く、学ぶ、暮らすシーンで用いる文具・家具・道具全般」となっている。アワードの開始当初は機能的価値を持つ作品が評価される傾向にあったが、近年は暮らしの中に新しい価値を見出せることが評価のポイントになっている。
毎年異なるテーマが設定されており、2018年のテーマは「BEYOND BOUNDARIES」。グランプリを受賞したのは「音色(ねいろ)鉛筆で描く世界」で、鉛筆に専用のホルダーを装着することで紙と鉛筆の摩擦音を増幅させ、「視覚情報を伴わずに機能する文具」「楽器のように音を楽しむ文具」といった新しい文具の展開を探求する作品である。
2015年からは「コクヨデザインアワードプロダクト」のブランドを立ち上げ、同社と受賞デザイナーと新規開拓した地場の生産工場で協業して、高い品質かつ300個という少ない製品ロット数で受賞作品の製品化を実現するプロセスを構築した。プロジェクトで開発された製品は同社の直営店舗と公式通販で販売されている。
このプロジェクトを通して、同社は新しい商品カテゴリーにトライアルする機会を持ち、受賞デザイナーにはリアルな市場で自分のデザインの価値を知ることができる機会を提供している。

評価ポイント

企業の資源を活用し、広くアイデアを募集して新しい文具・製品への挑戦の機会をつくっている。
時代に合わせたテーマを設け、既成の概念を超えた文具の枠にとらわれない製品の開発を試みている。

企業プロフィール

本社所在地:大阪府大阪市
創立年:1905年
資本金:158億円
従業員数:連結:6,784名、単体:2,019名
主な事業:文具・オフィス家具製造販売、空間デザイン・コンサルテーション
URL:https://www.kokuyo.co.jp/
(2018年12月末現在)

受賞スピーチ

森川卓也

コクヨ株式会社 取締役副社長 森川卓也 様

文具を超える文具、家具を超える家具をさらに世に送り出す

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[優秀賞]耳を澄ませば心に響く賞

日本ユニシス株式会社

川畠成道コンサートプログラム

活動内容

川畠成道コンサート日本ユニシスは、医療・福祉・教育分野でも活動するヴァイオリニストの川畠成道氏に共鳴し、1998年のデビュー時から支援を続けるとともに、パートナーシップを組んでさまざまな社会貢献活動を行っている。
1998年の川畠氏初ソロリサイタルの際、川畠氏が視覚障がいを持つことから、同じ障がいを持つ方々をコンサートに招待した。その後もコンサートへの招待を継続し、2005年からは毎年「川畠成道ニューイヤーコンサート」に100~150名の方を招待している。事前に講習を受けた日本ユニシスグループの社員ボランティアが招待者の自宅から会場までの送迎や会場内での誘導サポートなど支援を行い、一般の来場者とともに音楽を楽しむ場を設けている。
「川畠成道チャリティコンサート」は2001年に社内コンサートとしてスタートし、2015年に豊洲シビックセンターホールがオープンしたことをきっかけに、地域向けの体験型コンサートとして毎年開催している。会場では、アイマスクをつけて演奏を鑑賞する「視覚にたよらない美的体験」のほか、日本盲導犬協会との連携により「視覚障がいや盲導犬について知る講座」も実施している。他にも福祉団体の出店や、NPOの協力のもと「コンサートパンフレットの音声読み上げ体験」などを行っている。社員ボランティアに加え、近隣団体の社員や職員もボランティアとして参加しており、多くの団体と協働してコンサートを運営している。
本コンサートは、来場者が音楽を楽しみながら多様な人々と出会う場として、着実に共感の輪を広げている。

評価ポイント

20年以上の長きにわたり川畠成道氏とパートナーシップを組み、音楽を通じて社会貢献活動に取り組んでいる。
さまざまな団体と協働し、多様な出会いの場を提供している。

企業プロフィール

本社所在地:東京都江東区
創立年:1958年
資本金:54億8,317万円
従業員数:従業員数
主な事業:連結:7,740名、単体:4,350名
URL:http://www.unisys.co.jp
(2019年3月31日現在)

受賞スピーチ

平岡昭良

日本ユニシス株式会社 代表取締役社長 CEO CHO 平岡昭良 様

多様性をイノベーションに生かす企業文化が育まれてきた

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[優秀賞]世界と島で踊りま賞

株式会社パソナグループ

Awaji Art Circus 2018

活動内容

国際パフォーミングアーツフェスティバル「Awaji Art Circus(AAC)」パソナグループは、創業以来「社会の問題点を解決する」という企業理念のもと、“人を活かす”さまざまなサービスを提供している。2003年からは担い手不足に直面する農業の人材育成を始めたことを皮切りに、淡路島や京丹後、岡山などで“人材誘致”による地方創生事業を開始。そして島内への観光客誘致や、島の魅力を世界に発信する取り組みの一つとして、2015年から国際パフォーミングアーツフェスティバル「Awaji Art Circus(AAC)」をスタートした。
毎年秋の約1カ月間、世界各国のアーティストが淡路島に滞在し、パントマイムやアクロバット、コンテンポラリーダンスなど、パフォーマンスを披露する。淡路市、洲本市、南あわじ市の会場で開催されるメインプログラムをはじめ、1日特別イベントや地元小学校とのコラボレーション、島内ホテルでの出張公演といった異文化交流も行っている。2018年は岡山県久米南町の地方創生イベント「TANADA YOGA in上籾棚田」での出張公演など、4カ所の島外イベントにも参加した。
また、アーティストは島の魅力を国内外へ発信する役割も担っている。伊弉諾神宮の訪問や和太鼓体験、淡路人形浄瑠璃の鑑賞など、淡路島の歴史や日本文化を深く理解できる文化プログラムに参加し、SNSを通して母国語と英語で日々発信を行う。帰国後もブログやFacebookへの体験談の掲載や、アーティスト同士による共同パフォーマンスなど、AACをきっかけに交流が続いている。
2019年は「Tohoku Art Circus」として3日間東北でもイベントを実施。今後は淡路島をハブとして、日本全国の地方創生に取り組んでいく。

評価ポイント

活動を通して、島内外で人と人が交流するしくみを創出し、地域の活性化に寄与している。
社会課題の解決に向けた独自の取り組みにより、島の新たな文化をつくる勢いがある。

企業プロフィール

本社所在地:東京都千代田区
創立年:2007年(創業1976年)
資本金:50億円
従業員数:9,317名
主な事業:人材派遣、人材紹介、委託・請負、教育・研修、地方創生ソリューション他
URL:https://www.pasonagroup.co.jp/
(2019年5月現在)

受賞スピーチ

ブジョラ・エレナ

株式会社パソナグループ 事業開発部 マネージャー ブジョラ・エレナ 様

これからも文化発展や地域活性化に取り組んでいきたい

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[優秀賞]花とアートの森あわせ賞

六花亭製菓株式会社

六花の森の企画・運営

活動内容

六花の森北海道河西郡中札内村、帯広空港から車で20分ほど行くと、「六花の森」が見えてくる。約10haの広大な敷地に流れる三番川と、自生していたオオバナノエンレイソウの美しさに魅かれて、六花亭が工場用地として購入したのは1997年のことだ。荒れ地を本来の自然の姿に戻し、緑豊かに生まれ変わらせたいと、銘菓「マルセイバターサンド」の製造工場の建設と、十勝の自然が共生する景観や文化施設づくりに、20年以上かけて取り組んでいる。
同社の代名詞である花柄包装紙に描かれた6種類の「十勝六花」(エゾリンドウ、ハマナシ、オオバノエンレイソウ、カタクリ、エゾノリュウキンカ、シラネアオイ)をはじめ、200種類の草花が季節ごとに園内を彩るほか、築100年を超すクロアチアの民家を移築・修復した7つの小さな建物が点在。開拓農民で山岳画家であった故・坂本直行氏の「坂本直行記念館」や同氏が描いた「花柄包装紙館」、児童詩誌「サイロ」の表紙絵を飾った「サイロ五十周年記念館」などの作品館がある。2007年から一般開放を始め、毎年約5万人が訪れる。
さらに、中札内村の景観保全や地域文化の醸成にもより力を入れている。2000本のエゾヤマザクラを寄贈し、新たな桜の名所となっている「桜六花公園」や、2016年には中札内村・帯広市・観光協会が共催して「花咲くコンサート」をスタート。園内で開かれる夏の風物詩として、地元住民に定着しつつある。
草花の手入れや川の清掃など、地道でていねいな作業には村への感謝が表れている。季節の移ろいと大きな時間の中で、これからも長く愛される森に進化し続けていく。

評価ポイント

十勝の原風景を愛し、長い年月をかけて美しい自然と文化の営みを調和させ、地域に貢献している。
活動の知見を活かして行政と連携し、地域住民の心の豊かさと文化の醸成に寄与している。

企業プロフィール

本社所在地:北海道帯広市
創立年:1933年
資本金:1億3150万円
従業員数:1,326名
主な事業:和洋菓子製造販売・美術館運営
URL:http://www.rokkatei.co.jp/
(2019年4月現在)

受賞スピーチ

佐藤哲也

六花亭製菓株式会社 代表取締役社長 佐藤哲也 様

自然資本は時間の力を借りて、年々歳々魅力を増していく

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[特別賞]文化庁長官賞

キヤノン株式会社

綴プロジェクト

活動内容

文化財未来継承プロジェクト「綴プロジェクト(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)」は、キヤノンと京都文化協会が共同で、国内外にある日本古来の文化財の高精細複製品を制作し、オリジナル作品を保存しながら、その高精細複製品による有効活用を目的に立ち上げたプロジェクト。開始から10年を経て、葛飾北斎や俵屋宗達、雪舟といった貴重な文化財を、全国の所蔵者および海外に渡る前に所有していた寺社や地方自治体などへ、50作品以上寄贈してきた。
プロジェクトは技術開発のレベル向上に寄与し、技術者のモチベーションやチャレンジ精神の育成にもつながっている。2017年には画像解像度を2倍に引き上げ、より高精細に再現すると同時に、制作におけるオリジナル作品への負荷を軽減させるため、撮影時間の短縮やシステムの高速化を実現。2018年は、大英博物館が所蔵する3作品(「秋冬花鳥図」「津島祭礼図屏風」「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」)を制作・寄贈した。
さらに、同年には独立行政法人国立文化財機構文化財活用センターとの共同研究プロジェクトを発足し、より多くの人が文化財に親しみをもてるよう、幅広い鑑賞機会の提供と展示方法にも工夫を凝らす。ガラスケースを外し、畳に座って本来の屏風の鑑賞スタイルを展示室内に再現するとともに、照明の変化や映像を組み合わせ、屏風の表情を楽しめるような体験型展示を行う。東京国立博物館で開催した「松林図屏風」の展示では、約10万人が来場した。
地域の学校や公共施設では、ワークショップ型プログラムや対話型鑑賞プログラムなど、複製品によるアウトリーチ活用も広く展開。日本の美しい文化を伝え、人の心に明るい未来を綴っている。

評価ポイント

NPOや行政などと連携し、さまざまな人により深い文化体験ができる機会を創出している。
技術力を進歩させ、時代の流れを捉えた活動の広がりと厚みにより、文化の発展に寄与している。

企業プロフィール

本社所在地:東京都大田区
創立年:1937年
資本金:1,747億円(2018年12月31日現在)
従業員数:25,891名(2019年3月31日現在)
主な事業:精密機器の研究・開発・製造・販売
URL:https://global.canon/ja/
(2019年3月現在)

受賞スピーチ

田中稔三

キヤノン株式会社 代表取締役副社長 CFO 田中稔三 様

「綴作品」をみる機会を増やし、日本文化の発信に寄与したい

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